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[動画インタビュー] ジャパニーズRPG『百英雄伝』成功の秘密

KS Navi編集部
KS Navi編集部

成功の秘訣は「ユーザーに知ってもらう努力を惜しまないこと」
~ジャパニーズRPG『百英雄伝』は、 いかにして460万ドル以上もの高額支援金を集めたのか~

 今年7月末から約一ヶ月にわたって行われたキックスターターでのキャンペーンにおいて、JRPG『百英雄伝』が最低目標額である50万ドルを大きく上回る460万ドル(日本円で4億8千万円)以上もの支援金を集める大成功を収めた。

「コロナ禍ということもあり、始まる前はとにかく不安でした。しかし、開始直後からユーザーさんからの反応が怒涛のように返ってきて、結果、予想以上の支援を集めることができた。もちろん金額がすべてではないが、ユーザーさんの期待値がかなり高いということはこのことで実感できたし、そのような熱い思いに対して自分たちの考え得る最高のゲームを作りたい、作らなければいけないという思いが一層強まりました」

 キャンペーンを終えての心境を、当該プロジェクトの中心人物としてシナリオとゲームデザインを担当する村山吉隆氏(以下、村山)は感慨深げにこう述べるが、それもそのはず、これまでにキックスターターが扱ったゲーム・プロジェクトとしては、『シェンムーⅢ』(630万ドル)、『Bloodstained: Ritual of the Night』(550万ドル)に続いて歴代三位の出資金を集めたことに加え、日本人バッカーからの支援では過去最高の人数を記録したのだ。
 村山と言えば、大ヒットRPGシリーズ『幻想水滸伝』の生みの親として知られる稀代のヒットメーカーのひとりだが、本作には村山を筆頭にキャラクターデザインを河野純子、プロデューサー兼アートディレクションを村上純一、ディレクターには小牟田修と、錚々たる面々がキーメンバーとして集結。この一点だけにおいても、その期待は否が応にも高まるばかりだが、そもそもなぜ今回、新作ゲームを制作するにあたってクラウドファンディングという手段を選んだのか。
 その理由について村山は、「一番の根底にあるのは、自分たちが本当に作りたいゲームを作りたかったからですが……」と前置きしたうえで、次のように続ける。

村山吉隆氏(シナリオとゲームデザイン担当)

「まずはパブリッシャーと契約して資金を調達するという方法も当然、選択肢としてあったのは事実です。そのほうが安全策ですし、お金の心配をすることなく制作することができる。でも、それ以上に今回は自分たちが作るゲームを全面的にコントロールできるような形を採る必要があった。というのも、そうしないと自由にゲームを作れないから。また同時に、ゲームのIP(知的財産権)を自分たちクリエイターの手に残したいという思いも強くあった。これは例えば今後、『百英雄伝』の続編やスピンオフの話などが持ち上がったとき、外的な要因でその実現を妨げられたくないということです。以上のような考えから、クラウドファンディングの形式がもっとも適しているのではないかと思い挑戦してみようということになった」

 とはいえ、クラウドファンディングによるゲーム制作はキーメンバー四人にとっては初めての試み。村山が「挑戦」というワードを口にしたことが物語るように、キャンペーンをどのように進めていくかについては「日々、試行錯誤の連続だった」(村山)という。実際、苦労も少なくなかったようで、村山とは過去に『幻想水滸伝』でタッグを組んだ盟友ともいうべき河野純子氏(以下、河野)は、期間中の慌しさを振り返ってこう話す。

「正直、始まる直前まではこんなに大変だと思わなかった。というのも、準備の段階で一応のゴールラインというか、最終的にはこのへんまでクリアしようという予測を立てていたからですが、実際はそれを超える仕事量に追われることになり、終わってみたらぐったりでした(笑)。キャンペーンの終盤で、新たなキャラクターのデザイン案をユーザー投票で決めるというイベントを二回ほど行ったのですが、短期間に大量のラフスケッチを仕上げないといけなくて、私個人としてはこれが一番大変でした。でも、このイベント自体はかなり好評だったので、がんばった甲斐はありましたけどね」

河野純子氏(キャラクターデザイン担当)

 初挑戦の難しさを感じたのは河野に限らず他の三人のメンバーも同様だったようで、なかでも村上純一氏(以下、村上)は河野の話を補足するかのように、プロデューサーとしての視点も踏まえてこのように話す。

「通常のゲーム制作と大きく異なる点は、キックスターターの場合はこれから作る作品、まだ未完の作品に対する支援を募るために随時、ユーザーに対して新たな情報を提示して作品のアピールをしていく必要があるところ。しかもこれを、ある程度しっかりとした形にして見せていかないといけないわけです。そうしないと、ユーザーさんは納得してくれないし、当然、支援の額にも大きく影響する。でも、モノを作ってる人ってみんなそうだと思うんだけど、途中段階のモノって人に見せたくないんですよね。クリエイターの心情的にはやはり完全な形で提出したいわけで、その加減が難しい。どの段階で提出するべきか、つまりはどのラインで折り合いをつけるのかを探るのには苦労しました」

村上純一氏(プロデューサー兼アートディレクション)

 しかし村上は同時に、キックスターターだからこその新たな可能性も十分に実感しているらしく、「キャンペーンが成功に終わってから、スポンサー契約に関する話などで方々から良いお誘いを頂いたりと、始まる前と今とでは状況が段違いに変わってきています。これはまさに、『百英雄伝』に対するユーザーの期待値、熱量の高さを証明できたことの証であり、その結果です」とも言うから、その成果は想定以上といえそうだ。 では、手探りながらもこのような大成功を収めるに至ったその一番の要因とは何だったのか。ディレクターを務める小牟田修氏(以下、小牟田)は、その最重要ポイントとしてチームリーダー、村山の存在を挙げる。

「今作では、メインテーマのひとつとして“ジャパニーズRPGを現代に復活させる”というのを掲げているのですが、『百英雄伝』は、それを村山さんが旗を振って作るゲームがですからね、その求心力はやはり大きいですよ。その村山カラー的なものを、キャンペーンの序盤で実際に動くゲーム画面でユーザーさんに見せることができたのも大きいかなと。このことで、さらなる作品への信頼、説得力が生まれたんじゃないかなと思います。かくいう私自身も村山作品の大ファンなので、制作する側の人間ではありますが完成が待ち遠しい(笑)」

小牟田修氏(ディレクター)

 村山待望論、ではないが、国内外を問わず熱心なファンを持つ村山の新作を心待ちにしているユーザーにとってはまさに垂涎ものに違いない。と、やはりここで気になるのは、そんな四人の熱い思いが詰まった『百英雄伝』とはどのようなゲームなのか。
 メイン・パーソンである村山が話す。

「これは昔から一貫しているのですが、戦争という極限に近い状況下で、英雄として求められた人間がどのように考え、どう行動するかを追求したい、というのが私の作品の一番のテーマです。そこで重要視しているのが、その人間たちを描くことで、ただ単に戦争はだめです、とか訴えるのではなく、プレイヤーのひとりひとりに『この人間の考えや行動について、どう感じますか?』というのを問いかけるようなものに仕上げる、ということ。また、戦争ですから必然、群像劇になるのですが、その意味でも『幻想水滸伝』シリーズの系譜に連なる作品になると思いますし、このスタイルをいま、このメンバーでどれだけ進化させることができるのかというチャレンジでもある」

 そんな村山の世界観を実現させるうえでもっとも重要な要素のひとつであるキャラクター・デザインを担う河野は今回、いつもとはまた違ったこだわりを持って制作に取り組んでいるという。

「これまでは自分で考えたキャラクターを描くことが多かったのですが、今回は基本、メインのキャラクターは村山さんが考えています。そのため、詳細なキャラの指示書や設定がその都度、送られてくるのですが、私としてはまずはその村山さんのオーダーをいかに忠実に再現できるかにこだわって取り組んでいます。その上で、いかにそのキャラクターがリアリティを感じられる人格を持ってゲーム世界を生きることができるか、この点にも注力しています。私自身、いままで描いたことがないようなキャラクターにも数多く取り組んでいるので、大変ですが楽しんで描いています」(河野)

 こだわりに関しては、アート・ディレクションを担当する村上にも相当なものがあるようで、「ドット画だからこその味わい深さや動きの特性を最大限進化させることで、新たな表現を模索したい」と話すなど、制作陣の作品への熱量は疑いようもなく高いようだが、その実現にキックスターターが一役買ったことにもまた、疑いの余地はない。
 となれば、成功を勝ち取ったこの四人に、こう訊ねてみるのも悪くはない。

「今後、キックスターターを利用しようという人々に対してのアドバイスは」

 まずは村山が口を開く。そして、三人がそれに続いた。

「いまの率直な実感として、これは単にゲームという商品をネット上で販売しているのではなくて、ユーザー側に体験や気持ちを感じてもらう取り組みだと感じた。それは実は、ゲームそのものを作るよりも手間が掛かることだったりもするが、その部分をきっちりとやること。そして、その気持ちがユーザー側に伝わって初めて好意的な反応、支援を受けることが叶うのではないか。そのために、自分たちのやりたいことを知ってもらうための努力を惜しまないこと」(村山)
「作り手とユーザーの距離が近いので、その距離感を求めている人、というか、それらのユーザーとのコミュニケーションや求められる要望に対応できる人は特に向いているんじゃないかなと思います。ひとつ確かなのは、まったく新たな体験ができることかな」(河野)
「キックスターターの醍醐味は、ユーザー側と一緒に作品を積み上げていく感覚。自分たちが作ろうとしている作品の芯の部分がブレるのは禁物だが、そのうえで共感してくれた方々の要望にどう応えていくかってところが大事」(小牟田)
「とにかく、ユーザーの立場に立って物を考えていくこと。いろんな人が集まって、『こういう作品、欲しいよね』となることで支援金も集まってくるものだと思うから、あまり独りよがりで企画して進めたところで上手くいかないんじゃないかなと。常にユーザーの存在を忘れないことが重要」(村上)

 さらに、村山はこう付け加える。
「それともうひとつ、これはリーダーシップを取る立場の人に特に伝えたいことですが、いろんな意見があるなかでも、自分の目指すところ、作品の軸となる部分をしっかりと保持することがとても大事。意見は全部聞くが、最後に決めるのは自分、というスタンスを貫くこと。この点が疎かになると、統一感のあるモノには仕上がらないし、作品を壊してしまうことにも繋がりかねない。いろんな正解があるなかで、『今回の作品ではこれが正解です』と決断するのがリーダーの仕事なので、とにかく混乱しない、自分を最後まで見失わないことを心がけて欲しい」

 作品の完成予定は2022年。
 キャンペーン中に設定したストレッチゴールもすべて達成したことで、PCはもちろん、Xboxやプレイステーション5などの家庭用ゲーム機向けのソフト開発も決定したJRPG『百英雄伝』――。

「今後もキャンペーン中に立ち上げたSNSやディスコード・チャンネルを駆使して、ユーザーさんたちとの交流を続けます。そうすることで、ユーザーさんのひとりひとりが“我々と一緒にゲームを作る仲間”だと感じられるように、また、我々もそう感じられるように進めていきます」

 村山は最後にそう言った。
 作り手とユーザーとの関係性の新たな形は、こうして生まれつつある。

『百英雄伝』を手掛けるRabbit&BearStudios 株式会社・公式ウェブサイト:
https://rabbitandbearstudios.com/

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