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Interview
for Creators

モノではなく夢を売る。Kickstarterは自由でいられる場所

KS Navi編集部
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Headlines_見出し
  1. ■万全の準備が必要だった
    Kickstarterの作法を知るために100人の話を聞いた
  2. ■プロダクトの訴求力
    ソーシャルからコンフォートへのコンセプト変更
  3. ■動画の重要性がわかった
    最初の数秒間でいかに心をつかめるかにかかっている
  4. ■モノではなく夢を売る
    Kickstarterはクリエイターにとって自由でいられる場所

万全の準備が必要だった
Kickstarterの作法を知るために100人の話を聞いた

 もともとプロジェクトが成功する確信があったのかという質問に対して「最初は全然なかったですね」と答えるのは、世界初のフルオープンエアワイヤレスヘッドホン「VIE SHAIR」のクリエイターである今村泰彦さん。「VIE SHAIR 」は、彼の初プロジェクトでありながら、合計17万5112ドルものプレッジを達成し、製品をバッカーに送り届けることができた。
 Kickstarterでプロジェクトを立ち上げるに当たり、今村さんがまず取り組んだのは徹底的なリサーチだった。「Kickstarterは、資金を調達するためのプラットフォームというだけでなく、バックする人たち、クリエイターをサポートする人たちといったコミュニティがすでにしっかり出来上がっている。そして、そのコミュニティで共有している文化があるわけですよ。それは日本でもアメリカでもなくて、Kickstarterという国と言ってもいいかもしれない。そこは完全に僕にとっては異文化。そうなると、まずは話を聞かないと始まらないと思ったんです」。今村さんがKickstarterについての話を聞いた人数は、半年で100人を超えた。ネットで調べたKickstarter関連の人、たとえばプロジェクトを立ち上げたことのある人やクリエイターをサポートするPRエージェント、ビデオグラファー、グラフィックデザイナーなど、思いつく限りの人から情報を得ていった。そこで得たのは、プロジェクト成功には欠かせない、Kickstarterの作法だった。

_Hi-Fi stereo sound quality
_Unlimited number of receivers
_Automatic adaptive frequency mechanism.
_Low latency( <12.5 milliseconds )

プロダクトの訴求力
ソーシャルからコンフォートへのコンセプト変更

 半年間で100人を超えるリサーチによって、「VIE SHAIR」プロジェクトは優秀なチームを得る一方、当初のコンセプトから方向転換をすることになる。「もともと『VIE SHAIR』は音楽をシェアする、人と人が音楽でつながる、ということを目指して作った製品です。音楽を閉ざされた状態で、ひとりで楽しむのは面白くない。みんなで聴いたら絶対楽しい。ただ、問題は騒音だと。だから、静かにみんなで楽しめるのがこの製品だ、と僕が力説する。でも今思うと、それは極めて日本人、それも東京的な発想なんです。アメリカ人は『なんで?、爆音で楽しめた方がいいじゃん!』と、全然食いついてくれない(笑)。そこでPRエージェンシーが勧めてきたコンセプトが『ペインフリー』というものでした」と今村さん。
 ペインフリーとは、ヘッドホンを長時間することによって生じる耳の痛みからの解放(=快適)ということ。そもそも「VIESHAIR」は、会話をしながら音楽を聴くために、スピーカー本体が耳から浮いた構造になっている。この製品が解決する問題は「ペインフリー」であるとすることによって、話を聞く人の食いつき方は大きく変わったと、今村さんは言う。ソーシャル(人とのつながり)からコンフォート(快適)へ。コンセプトをシフトチェンジさせることで、プロジェクトは成功へと大きく近づいていった。

Kickstarterでは自身でも第2弾となるイヤホンプロジェクトを進行中。トラブルばかり起きると笑いながら話してくれた

「VIE SHAIR」独自のエアーフレーム構造によって、スピーカー本体が耳から浮いた状態になり、音楽だけでなく周りの音も聴くことができる

動画の重要性がわかった
最初の数秒間でいかに心をつかめるかにかかっている

 「Kickstarterというのは、誰かの問題を解決するためのプラットフォームなんです。その問題がいま解決されていないから、新しいモノを作って解決してあげる。そういったプラットフォーム。そこを分かっていないと、大きなプロジェクトとして成功しない。優秀なエージェンシーもそこを見ますよね」。誰に向けて、何の問題を、どうやって解決するのか?、そしてそれはいくらかかるのか? それらのプランをしっかりと事前に立てることがプロジェクト成功の必須条件だと今村さんは言う。
 プロジェクトのコンセプトも固まり、すでに製品のプロトタイプの製作は30台を超え、完璧なところまで来ていた。あとは量産するだけという段階。問題はファンディングゴールの設定をいくらにするかという1点だった。今村さんはファンディングゴールを15万ドルに設定した。「結構、これは反対されたんです。15万ドルというとかなり高い金額で、もしかするとメイクしない可能性もある。10万ドルにした方がいいんじゃないかという意見もありました。でも、実際にメイクした場合、製品をバッカーの人たちに届けなければならないわけだから、10万ドルではそれが難しい。メイクしたところでバッカーの人たちにデリバリーできなければ、ビジネスとしてもう次はない。だから100%できるという確信が持てるプランを選択しました」。
 結果として、「VIE SHAIR」プロジェクトは、合計17万5112ドルものプレッジを集め、無事ファンディングゴールを迎えることができた。しかし、今村さんは反省点もあると考えている。「Kickstarterでバックを集めるために、最も重要なのが動画なんですが、この動画をもっと上手く作れば良かったなとは思っています。製品のストーリーを重視しすぎたせいで、ちょっと長すぎた。作ったモノが解決する問題と解決策をもっとストレートに押し出せば良かった。だから、いま進めているイヤホンのプロジェクトでは、シーンとコマとテンポ良くつないで、CMみたいな感じで作っています」。

独自のエアーフレームが耳に側圧をかけず、分散するように設計。また、耳のまわりに汗をかきにくく、装着時のストレスが少ないのが特徴

モノではなく夢を売る
Kickstarterはクリエイターにとって自由でいられる場所

 「Kickstarterは他のどんな世界とも違いますね。そこは本当そう思います」と言う今村さんは、Kickstarterの最大の魅力を、“クリエイターが自由でいられる場所”だと考えている。「自分が作りたいモノを作って、それが多くの人に認めてもらえたら、それは究極の自由だと思うんです。もちろん、そこにはリスクもあるんだけど、自由にリスクは付きものだし。そもそもサラリーマンがつまらないのは、リスクを取れないからだと思うんです。本質的にリスクを取らせてくれない。いま、多くの大企業と呼ばれるメーカーから魅力的な製品が生まれてこない理由は、そこにあると思っています。奇抜なアイディアも何度も行われる製品会議のどこかで落ちてしまう。上層部のフィルターやバイアスによって。本当、そういうのが僕は苦手で。その点、Kickstarterにはそういったフィルタリングやバイアスが一切ない。もちろん、バッカーの人から厳しい意見をもらうこともありますが、不思議とそこは素直に聞けるんですよね(笑)。きっとバッカーの人も同じくリスクを取ってくれているフラットな関係性だからだと思いますね」。
 今村さんは、もっと日本のクリエイターにKickstarterを活用してほしいと考えている。「僕がなぜハードウェアをやっているのかというと、基本的にその層が厚いから。僕自身はネジ1本作れない。だけど、街を歩けばそこら中に中小企業や工場があって、欲しい素材はネット検索すれば、次の日には手元に届く。しかも最高の素材で。日本でハードウェアを作るハードルは、実は相当低いと思うんです」と言う今村さんは、自身が考えるKickstarterについてこう続ける。「僕はモノを売っているとは思っていなんです。夢を売っていると思っている。モノを売るんだったら、もっと売れるモノを作れると思うし。そもそもKickstarterでコスパのいいものを売っても仕方がない。いま現実に存在しないものを作る。そんな夢にバッカーの人たちも乗ってくる。モノを買うという行為には、当然損得勘定が付きもので、大手メーカーの白物家電が20%オフで買えるとか、そういったレベルの話。じゃあ、セールまで待ってそれを買うって、楽しいの? って(笑)。Kickstarterが夢の国だと思うのは、夢を売って、それにお金を出す人がいる。イノベイティブなモノだからこそ、半年や1年でもバッカーの人たちは完成を待ってくれる。それがKickstarterです」。

コンセプトからプロトタイプができるまで9カ月。デザインも何度も修正し完成に至った

見事プロジェクトを成功させた「VIE SHAIR」は、現在市販されており、購入することが可能


Profile
VIE STYLE 代表
今村 泰彦
1975年12月7日生まれ。ワーナーミュージック・ジャパンにてオンライン音楽配信事業開発に携わる。2013年よりEvernoteに参加、パートナーシップマネジャーに従事したのち、VIE.STYLE株式会社を設立。

Text by Taku Kazama
Photo by 39works

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