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「熊野古道写真集」妥協せずに作るための価格設定が重要

KS Navi編集部
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  1. ■表現者として考えること
    小説・エッセイ・写真で表現し続ける
  2. ■これからの出版のあり方
    Kickstarterという新たな出版のカタチ
  3. ■モノの正しい価値と価格
    妥協せずに作るための価格設定が重要

表現者として考えること
小説・エッセイ・写真で表現し続ける

 「 KOYA BOUND」は熊野古道をテーマにした美しい写真集。1万円近いプレッジ額にも関わらず、Kickstarterでは950万円ほどのバックを集め、プロジェクトとして成功を収めた。このプロジェクトのクリエイターはクレイグ・モドさん。ライターやデザイナーとして幅広く活躍する彼は、もともと出版社を自身で立ち上げたこともあるなど、本づくりには大きなこだわりを持っている。「20代からずっと本に興味があって、実際に本づくりをしてきました。また、日本に来て18年。日本の良さを世界に伝えていきたいということもあって、『KOYA BOUND』をKickstarterのプロジェクトとして立ち上げました」。
 クレイグさんは、2010年から1年半ほど、スマートフォンアプリ「Flipboard」の開発も手がけていたこともある。ソーシャルメディアのニュースやSNSの内容を集め、雑誌をめくるような感覚で見ることができるアプリだ。しかし、そういったアプリの開発に魅力を感じられなくなってきたとクレイグさんは言う。「Facebookに代表されるソーシャルメディアは、とても便利なものですが、その一方、様々な問題も抱えています。アメリカの政治問題やミャンマーで起こっているロヒンギャ難民問題など、実はフェイクニュースが多く流れていることが要因にもなっています。ソーシャルネットワークを新たに立ち上げても、世の中が良くなるわけではない、むしろ悪くなってしまう。そんなジレンマもあって、だんだんそこに時間をかけていくことが自分でもできなくなってきたんです」。
 クレイグさんがいま一番重要なテーマとして位置づけているのが、“人間の意識”について。仕事やプライベートでも、パソコンやスマートフォンの画面と向き合わざるを得ない現代人は、どうしてもその画面からの情報に意識が引っ張られてしまう。「どうしたらそういった画面に向き合う人生と、向き合わない人生をうまく組み合わせることができるのか。それについていろんな人にインタビューしたり、山奥で行われている瞑想を実際に見に行ったりしています」と言うクレイグさんは、本に関しても、電子書籍よりいまは実際に印刷された紙の本が重要な時期になってきたと考えている。「みんないまは画面に疲れていると思うんです。パソコンを触るのに疲れていて、レコードやスローフードなど、具体的な手触りのあるものに興味が行っている。10年前ならインディーズ専門の小さな本屋さんが流行るなんて誰も想像できなかったんじゃないかな」。

クレイグさんは、製作行程も作品のストーリーの一部として発信している

これからの出版のあり方
Kickstarterという新たな出版のカタチ

 自身でも出版社をやっていたこともあるクレイグさんは、Kickstarterに新たな出版の可能性を感じている。「せっかく印刷物としての本を作るのだから、そのクオリティには徹底的にこだわりたい。だから、値段もそれなりに高くなってしまう。よほど有名な作家の作品でもない限り、1万円の写真集なんて、普通の出版社なら絶対出さないと思います。でも、Kickstarterならそれができる。しかも、それが1千万円近く売れるというのはまさに奇跡のように感じられます。たぶん、それができるのは、Kickstarterがこれまで10年かけて大切に築いてきた信頼されたプラットフォームだから。自分のウェブサイトで本を売るのであれば、ここまでの数字にはなりません。もちろん、ぼくのファンの人たちはある程度買ってくれるでしょう。でも、Kickstarterならファンの人たちから、さらにKickstarterのネットワークで広がっていく。それが魅力ですね」。Kickstarterの売り上げで、印刷費や人件費をまかなう出版のカタチは、従来の余剰在庫による赤字の心配がないという意味でも、自費出版においてベストなものだとクレイグさんは考えている。

モノの正しい価値と価格
妥協せずに作るための価格設定が重要

 クレイグさんに、これからKickstarterを始める人にアドバイスを聞いてみた。「何より一番大事なのは、バッカーとのつながり、コミュニケーション、信頼関係です。ぼくの場合は、もともとのファンの人たちのメーリングリストがベースにありました。自分の作品を支持してくれる人たちのコミュニティを作ることができていれば、Kickstarterのプロジェクトも成功に大きく近づくはずです。それと、大事なのは価格設定。いまの人たちはあまりにも安い値段に慣れすぎています。卵が6個で100円とか200円で買えてしまう。でも、本当の卵、つまり丁寧に育てられている鶏の卵なら600円、700円はして当然。これが本当の値段です。『KOYABOUND』も1冊1万円にしないと、このプロジェクトはジャストにならない。1万円にするから、ぼくらも赤字にならないし、この本の印刷をお願いした埼玉の印刷所の丁寧な仕事にも、きちんと対価を支払うことができる。Kickstarterでは、日本の印刷所で印刷することもプロジェクトでは紹介しました。それを作品の物語の一部にすることも、Kickstarterならできるんです」。

『KOYA BOUND』の印刷は埼玉の印刷所に依頼した。その丁寧な仕事ぶりも作品の物語を構成する重要な要素となっている


Profile
ライター・デザイナー
Craig Mod
ライター・デザイナーとして、東京とニューヨークを拠点に世界各地で活動中。著書に『ぼくらの時代の本』(ボイジャー)などがある。 instagram:
https://www.instagram.com/craigmod/

Text by Taku Kazama
Photo by Craig Mod

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